呪イノ少女、鬼ノ少女

「その…か、顔が近いです」

「そう?私はもっと近付けていたいのに」


訳が分からない。

ますます澪の思考は縺れて行くばかり。


何故、自分は初対面の、しかも女性に熱烈な告白を受けているのか。

確かに、羨ましくなるような程の美貌の持ち主だが、残念ながら澪にはその手の趣味は無い。


「あ、あの…私、そこの家に用があるんですけど」


それでもこれ以上、詰め寄られては落とされてしまいそうで怖かった。


「ああ。澪はお父様の家を見に来たんだったわね」


ようやく九音が離れてくれた。

ひとまず身の危険から開放されてほっと、胸を撫で下ろす。


「雛ちゃんがムキになった理由が分かるような…」

「何か言った?」

「い、いえ」


ぼそっと呟いたつもりだったが、思わぬ地獄耳だった。

危ない、危ない、と澪は額の汗を拭う。


その間に、九音は一人でさっさと父の家の方に歩いて行ってしまう。


「あの人何しに来たんだろ?珠祭の当主って、昨日雛ちゃんの話に出てきたアレよね…」

「澪ー!」


得体の知れない怪しい女について考えていた澪を、その本人が呼ぶ。


何だと見てみれば、九音は壊れた引き戸をガタガタと引いたり、押したりしていた。


「この扉開かないわ」


かなり不機嫌だ。

今にも蹴り破ってしまいそうである。