呪イノ少女、鬼ノ少女

「っ、分かり…ました」


雛子は顔を歪ませながら、頷いた。

いや、頷くしかなかった。


九曜は、珠祭の名前を出されては従わざるを得ない。

それがルールだ。

悔しそうに唇を色が無くなるほど噛み締めながら、雛子はゆっくりとその場から離れた。


「澪さんには、」

「お前もしつこいわね」

女は早く行け、と首をしゃくる。


雛子は一度低く唸ってから、背を向けて走り去っていった。


「ひ、雛ちゃん…っ」


一部始終を傍観していた澪は、雛子を追い掛けようとした。


だが、その手を女に掴まれた。


「澪、行かないで」


懇願するような眼。

母に縋る子供のような純朴な眼で、澪に訴えかける。


「は、離して下さい!!」


振り払って雛子を追い掛けなければならない。

なのに…


「振り払わない?」

「くっ…」


払えなかった。

女の腕は澪よりもずっと細い。

簡単に払えるはずなのに、何故か出来なかった。


そうしてはいけないような気がしたからだ。


「いいのよ、澪。九曜の娘は追わなくていいの」


女の指先が頬にわずかに触れた。

そっと、澪が嫌がらないか確かめるように。


だが澪は逃げなかった。

そう分かって、女は愛しそうに手の平全体で澪の頬を包んだ。


「あの子は私に噛み付きたかっただけよ。あなたの事なんて、何も心配していないわ」