呪イノ少女、鬼ノ少女

「決めた。殺す」

「我らと闘うのか?」


目の色を変えた茜に対し、鬼は何故か余裕めいた表情で答えた。


「そう言ったはずよ」

「それは構わぬ。が、娘はよいのか?アレの元にいるのは、天草黒丞だぞ」


屋敷では、今まさに二人が争っている。

その証拠に、屋敷の方から時折激しい音が響いてくる。


「あの子には逃げろと言ったし、それでも逃げないのなら、それはあの子の選択よ」

「見捨てるのか。むざむざ死なせるとはな、それでも母か?」

「……澪ちゃんみたいな事言わないでよ」


うんざり、と茜は首を力なく振った。

そんな言葉は、ここ数日耳ダコが出来る程聞かされ続けた。

もう十分だ。


「これがウチの教育方針なの。見捨ててないの。私はあの子の事を精一杯思って助けないだけ。勿論、死なせたりなんかしない」


茜が雛子を助けないのは、彼女を強くしてやりたいからなのである。

茜の性格と日頃の態度から、澪には勘違いされてしまっているが、茜はいつだって雛子の事を愛しているのだ。

本音では、今すぐにでも雛子の元へ駆け付けたい。

彼女を苦しめる全てのものを、取り払ってやりたい。


だが、それでは雛子は強くなれない。

鬼祓として生きる以上、あらゆる困難な状況を己の身一つで乗り切れなければならないのだ。


「私は母親だから、泣く泣く雛を千尋の谷に蹴り落とすのよー」