呪イノ少女、鬼ノ少女

「軽いね、九音ちゃん。こんなに弱ってたんだねぇ」


ずっと近くにいたのに、九音はそれを少しも気付かせなかった。

辛かったはずだ。

苦しくないはずがない。

気が狂う程の悪夢に苛まれたに違いない。

だというのに、そんな素振りを欠片も見せなかった。

茜は見たことが無かった。


「そんな娘をよくもまぁボコボコに…。変わらないわねー、アンタ。相変わらずサイテーだわ」


ヘラヘラとしながらも、茜の言葉は刃のように鋭く放たれる。

仕方がない。

この鬼は、茜にとって許せない事をしでかしたのだから。


鬼に落ちたとはいえ、他の鬼と混ざっているとはいえ、母親が娘を傷付けたのである。

無論その様な親子の情愛などが欠落してしまうのが、鬼になるという事なのだと、茜も十分理解している。

だがそれを踏まえた上で尚、茜は許さない。


なぜなら、二人は実の親子なのだから。

鬼になろうが、親子は親子。

母は子に無償の愛を注ぐものなのだ。

そして、その関係は、茜がどれ程苦悩して、切望しても手に入らないのである。


「私への嫌味のつもり?」


茜はどれだけ母を演じても、決して本物にはなれないのだ。

そんな彼女の前で親が子を襲った。

茜が鬼祓で、四音が鬼という事などもはや関係がない。

幼馴染みで親友だろうと関係ない。


茜は四音を許さない。