呪イノ少女、鬼ノ少女

直後、未来視の通りに乱入者の右腕が放たれた。

速い。

打った、と思った瞬間には鬼の鳩尾を捕らえていた。


「ちっ!」


しかし鬼は、間一髪受け止めている。

予見していた故に、受け止める事が出来たのだ。

だが、防いだ拳はミシリと軋みを上げている。

もし直撃していたならば、胴を貫かれていた事だろう。


「化け物よなぁ……九曜茜」

「それはお互い様。久しぶり、四音。聞こえてるかしらぁ?」


乱入者の正体は、茜だった。

普段と変わらない締まりの無い笑みを張り付けているが、身に纏った服はボロボロに、全身には無数の傷を作っている。

顔に、腕に、背中に深い爪痕。

一番酷い肩の傷は肉が大きく抉れ、中の白い骨が覗いていた。


「無視しないでよー、四音」

「……お前と話すことなどないそうだぞ」


鬼は不機嫌を表すように、受け止めた茜の拳を無造作に払い、後ろに飛び下がった。


「あはは、会わせる顔が無いの間違いでしょーよ?」


茜はそんな鬼には追い打ちを掛けず、代わりに気を失った九音の傍にしゃがみ込んだ。


敗れた主をそっと抱き起こす。


「あはは、お疲れさまねー」


その体は思っていたより、ずっと軽かった。

痩せ過ぎている。

抱き締めた腕の中に、まるで体温を感じない。

まるで人形か何かを抱いているようで、うっかりすると潰してしまいそうだ。