呪イノ少女、鬼ノ少女

「……そうね。その通りだわ。足掻くのは止めにする」


九音はぬかるんだ地面に座り込み、血を流し続ける腕もだらりと垂らしたまま、荒れ狂う天を仰いだ。

もはや指一本も足掻く事は叶いそうにない。

立つ事など、到底無理。


左腕の傷が良くなかった。

深過ぎる怪我に、体力と精神の両面を削り取られている。

九音はこれ程満身創痍だというのに、鬼は未だ無傷に近い。

これでは、やる前から結果は見えている。


故に、足掻きは止めた。

今の九音に、無駄な労力を払う余裕はない。


「けれど……」

「む?」


そう言った九音の瞳は、まだ敗北を悟ってはいなかった。

何か、勝てる算段がある。

そう確信している眼だった。


「まだ終わらない。終わるには、少し早い」


そして、その言葉の直後だった。

気を失いフラリと後ろに倒れこむ九音のすぐ傍を、旋風が駆け抜けた。

雨を巻き上げ、風を打ち払う旋風は、あっという間に鬼の目前へと迫る。


「お前は…!」


突然の乱入者は、鬼が正体を言葉にする前に垂直にその右足を跳ね上げ、鬼の顎を打ち抜いた。

決して軽くはない鬼の体が、衝撃で宙に浮き上がる。


「きさ…っ!?」


顎を蹴り抜かれた鬼の目に映ったのは、打ち落とそうと振るわれた右の爪だった。


だが、それは現実ではなく『幻視』。

数瞬先の未来。