呪イノ少女、鬼ノ少女

「ぐっ…く!」


黒いモノが溢れだした右目を押さえた九音は、バシャリと飛沫を立てて膝を屈する。

止まらない。

溢れる。

溢れる。

黒い呪いが溢れだす。


「終わるのか、九音」


地面を掻き毟り、痛みを和らげようとする九音を、鬼は冷め切った瞳で見下ろす。

もはや、九音が堕ちるのは時間の問題だ。

今すぐではなくとも、数日のうちに必ず鬼になる。

そこまで力の侵食が進んでいる。

もはや、哀れな九音は、足掻きも出来ずに勝手に沈んでいくだけだ。



終わった。

珠祭の鬼は瞳を閉じ、雨の天を仰いだ。




………コツン。


「む?」


額に何か堅い物が当たった。

再び、瞳を開いた鬼が足下を見下ろすと、取るに足らない小さな石ころが転がっていた。


「……油断、ね」


荒い呼吸の合間に、そんな言葉が紛れる。


「お前……」


鬼はそう呟いたまま、言葉を失った。

唖然とした鬼の視線の先で、戦意の衰えぬ左眼が笑っている。

理解出来ない意志だった。

何が、彼女をこうまで支えるのか?


九音は鬼が目を閉じた瞬間に石を投げたのだ。

投げたというには弱々しい一投だったが、その反抗は確実に鬼に届いた。