呪イノ少女、鬼ノ少女

「雛ちゃん…」


一歩退いて肩が触れ合って、澪は気付いた。

雛子が怯えている。


どうしようもなく、根本的に危ないタイプの人間だというのは分かる。

だが、一目見て、僅かに言葉を交わした程度。

それだけで、半鬼である雛子が怯え震えてしまう位に、この黒い男は危険なのか?


「何故、私が九曜だと?」

「あの馬鹿娘……茜によく似ている」


更に一歩踏み込み、一歩下がる。

会話があるというのに、やけに雨が屋敷を打つ音ばかりが大きく聞こえる。

それは、あたかも舞台の始まりを心待ちにする観客のざわめきのように。


「血は繋がっていませんよ」

「くっくく……そのような下らない言葉を吐く辺りが良く似ている」


天草黒丞は喉を鳴らし、手早く包みの紐を解いていく。

その僅かな間も、澪と雛子は身を寄せ合い、部屋の壁際まで下がっていく。

もう後はない。


「あの馬鹿娘の娘か………くっくく。斬り甲斐があって、結構だ」

「ちィ」


舌打ちもしたくなる。

やり合うまでもないからだ。

雛子では、この男に太刀打ち出来ないのは目に見えている。


「さて」


解いた封の先から、長く立派な拵えの柄が覗いた。

同時に、不快なまでの妖気が部屋中に吹き出して、浄化されていた室内の空気を不浄に染め替えていく。


天草は包みを解いた長大な刀の鞘を掴んで顔の高さに持ち上げると、まるで友人にでも掛けるような気軽さで、その刀の銘を口にした。


「童子切」


ぬらりと光る牙を覗かせた天草は、指を絡み付かせるようにその柄を握った。


そして、その呪われた刀身を抜き放つ。