呪イノ少女、鬼ノ少女

電話の向こうでは、茜が妖と激しく戦う音。


何も出来ない。

無力さがやるせなかった。


幾ら最強の鬼切の一人である茜と言えど、数十の妖が相手では勝負になるはずがない。


『雛……聞きなさい』


受話器を置いて立ち上がろうとした雛子を制するように、茜の言葉が響いた。

続いて、肉が引きちぎれるような音が響く。


『そっちにね、嫌ーな男がいる可能性があるの』


飛沫く音。

続いて、トマトでも握り潰したような音を受話器が伝えてくる。


『そいつは、とんでもなく危険な男よ。絶対に近づいちゃ駄目よ』

「母さん、その男って……やっぱり」

『そうよ。天く………』


―――ブツン…。


不意に、茜の声が途切れてしまった。


「母さん?」

『ツー…ツー…ツー…ツー……』

受話器からは、突然の不通を知らせる信号。

訳が分からず、繋がらなくなった母親に呼び掛ける。

だが、当然繋がらない。


「何でよ、母さん!母さ…っ」

「雛ちゃん!」


澪の悲鳴。

―――何が…

澪の怯えた視線と震える指先が指し示す先を、雛子はゆっくりと振り返る。





そして……振り向いた雛子の視線の先に、『ソレ』はいた。