呪イノ少女、鬼ノ少女

「ある男の頼みでな」


降りしきる雨に身を打たせ、鬼は面倒臭そうに吐き捨てる。


「我らの力が必要らしいが、まだ足りぬ。故に、お前も取り込む為に、堕ちてもらわねばならぬそうだ」


裏返り、鬼の群れの一つになれ。

そう鬼は嗤う。


「男……天草黒丞」

「ほう、知っておったか」


鬼祓から情報は届いている。

希代の鬼祓にして大逆の徒、天草黒丞。

目の前の鬼を解き放った、憎むべき怨敵。


「だから、澪を狙うのね」

「あの男は、より濃くなった我等を望んでいる。殺してしまうのは易いことだが、あれを墜とせばそなたはもう留まれぬし、あの娘もまた我らのより良き糧になる」

「…っ」


返す言葉に詰まり、九音は歯噛みした。


澪という存在は、九音の心の大部分を占めている。

彼女を失ってしまえば、九音は鬼に堕ちてしまうのは間違いない。

だが、それだけではない。

九音にとって、澪は事実救いをもたらしてくれるのだ。


その事をも、知られてしまっている。

……いや、当然か。

母がいるのだから。

こいつらは……危険過ぎる。


「澪には…手を出させない」


九音は、『眼』に力を集中させて、深く身構えた。

だが、


「それはどうかな」


鬼は哂い、九音の後ろ、屋敷を指差す。

「何を…」と言い掛け、九音はハッと目を見開いた。


「言ったばかりだ。敵は我らのみではないぞ、九音。まだ、本命……天草黒丞がいる」





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