「ある男の頼みでな」
降りしきる雨に身を打たせ、鬼は面倒臭そうに吐き捨てる。
「我らの力が必要らしいが、まだ足りぬ。故に、お前も取り込む為に、堕ちてもらわねばならぬそうだ」
裏返り、鬼の群れの一つになれ。
そう鬼は嗤う。
「男……天草黒丞」
「ほう、知っておったか」
鬼祓から情報は届いている。
希代の鬼祓にして大逆の徒、天草黒丞。
目の前の鬼を解き放った、憎むべき怨敵。
「だから、澪を狙うのね」
「あの男は、より濃くなった我等を望んでいる。殺してしまうのは易いことだが、あれを墜とせばそなたはもう留まれぬし、あの娘もまた我らのより良き糧になる」
「…っ」
返す言葉に詰まり、九音は歯噛みした。
澪という存在は、九音の心の大部分を占めている。
彼女を失ってしまえば、九音は鬼に堕ちてしまうのは間違いない。
だが、それだけではない。
九音にとって、澪は事実救いをもたらしてくれるのだ。
その事をも、知られてしまっている。
……いや、当然か。
母がいるのだから。
こいつらは……危険過ぎる。
「澪には…手を出させない」
九音は、『眼』に力を集中させて、深く身構えた。
だが、
「それはどうかな」
鬼は哂い、九音の後ろ、屋敷を指差す。
「何を…」と言い掛け、九音はハッと目を見開いた。
「言ったばかりだ。敵は我らのみではないぞ、九音。まだ、本命……天草黒丞がいる」
*****
降りしきる雨に身を打たせ、鬼は面倒臭そうに吐き捨てる。
「我らの力が必要らしいが、まだ足りぬ。故に、お前も取り込む為に、堕ちてもらわねばならぬそうだ」
裏返り、鬼の群れの一つになれ。
そう鬼は嗤う。
「男……天草黒丞」
「ほう、知っておったか」
鬼祓から情報は届いている。
希代の鬼祓にして大逆の徒、天草黒丞。
目の前の鬼を解き放った、憎むべき怨敵。
「だから、澪を狙うのね」
「あの男は、より濃くなった我等を望んでいる。殺してしまうのは易いことだが、あれを墜とせばそなたはもう留まれぬし、あの娘もまた我らのより良き糧になる」
「…っ」
返す言葉に詰まり、九音は歯噛みした。
澪という存在は、九音の心の大部分を占めている。
彼女を失ってしまえば、九音は鬼に堕ちてしまうのは間違いない。
だが、それだけではない。
九音にとって、澪は事実救いをもたらしてくれるのだ。
その事をも、知られてしまっている。
……いや、当然か。
母がいるのだから。
こいつらは……危険過ぎる。
「澪には…手を出させない」
九音は、『眼』に力を集中させて、深く身構えた。
だが、
「それはどうかな」
鬼は哂い、九音の後ろ、屋敷を指差す。
「何を…」と言い掛け、九音はハッと目を見開いた。
「言ったばかりだ。敵は我らのみではないぞ、九音。まだ、本命……天草黒丞がいる」
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