呪イノ少女、鬼ノ少女

「言葉は選べよ。鬼に落ちたとは言えど、そなたの母だろう」

「アレは、それだけの事をしたのよ」


両者の間の緊張が高まるにつれ、雨足がだんだんと強まる。

九音の腕に滴る雨が、真紅と混じり合い、大地に染み込んでいく。


「一つ…疑問があるわ」

「聞くがよい」


傲慢に、鬼は許した。

濡れて更に艶を増した前髪を掻き上げる。


「何故、澪を狙うの?」


九音には、それが分からなかった。


鬼には、澪を狙う理由が無いのだ。

九音にとって、澪は大切な玉。

それは鬼も承知している。


だが、それは奴らには関係がない事。

澪を狙うメリットがない。

むしろ姿を見せる事で、鬼祓というデメリットを招いている。

こいつらは誰にも姿を見せず、そっと消えるべきだったのだ。

だというのに鬼は既に二度、今を合わせれば三度。

澪を狙い、現れた。


そして、


「何故、澪を堕とそうとするの?」


ここ数日、澪が纏う陰の気が、彼女を確実に悪い方向に引き摺っている。

澪が雛子の血の匂いに当てられた昨日の一件を見れば、それは明らかだ。


確かに、澪には鬼に堕ちる『可能性』はある。

だが、澪は異能の力も持たなければ、深い妄念も無い。

この鬼が、何かをしたのだ。


「答えてもらいましょうか」


頬に張り付いた雨水は拭えても、嫌な予感が拭えない。

この『眼』では見えない、何か良くない気配がする。