呪イノ少女、鬼ノ少女

瞬間、鬼の口元が悪意に歪んだ。


雨が、ぽつぽつと降り始める。


九音の母。

十数年前死亡した……いや、鬼として封じられた珠祭四音。

異能に飲まれ、裏返った先代当主。

彼女が、今二十の群れの中にいる。


「あぁ…そうだよ九音。よく分かったな。そなたの母も、ここにいる」


哂う鬼は、胸の真ん中を差して認める。

だがそう聞いても、九音は何の感傷も抱かなかった。

大和の報告を受けた時から、分かっていた事だから。


いや、そうでなくても九音は、驚きもしなかったろう。

彼女が生まれ落ちた時から一貫して抱くのは、愚かな母に対する憎悪のみ。


「封じはもぬけの殻になっていたし、一人では何も出来ないあの人の事よ。行く宛も無く、お前達に付いていったのでしょう。違うかしら、ご先祖方?」

「くくくっ、その通り。そなたの言う通りだよ、我らが愛し子」


鬼が頷くのを見て、九音は嘆息する。

我が母ながら情けない。

死んでも、まだ娘に迷惑を掛けてくれる。

親の愛が有難過ぎて、涙が出そうだ。


「母が恋しくはないのか?望むならば泣き付くことを許そう」

「冗談。私の涙は澪の為に流れるのよ。そんなゴミ屑には勿体無いわ」