呪イノ少女、鬼ノ少女

それを聞き、鬼はさも可笑しいと言わんばかりに喉を鳴らした。


「くくく、珠祭も変わったのだなぁ。力を私事に行使するとはな」


珠祭の異能は、民の為のもの。

力を持たない者にとって危険でしかない力を、民の為にだけ使用する。

そう制限する事で民の恐怖を抑え、逆に支配者としての地位を守る道具にしてきた。


「時代が違うのよ。珠祭なんて、随分前からもう形骸化しているわ。それに、一族は私しか残っていないし」


当主を傀儡にし、村を支配しようとする一族は誰も残っていない。

だから、九音は心おきなく自身の為に力を使い続けてこられたのだ。


九音はそこで一旦、言葉を切る。

熱を持つ双眸を伏せ、深く息を吸い込む。

そして、何か決意めいたものを込めて再び目を開いた。


ある事を確かめる為に。


「でも、そんな事聞くまでもないんじゃないのかしら?ねぇ……『そこ』にいるんでしょう?」


九音は、静かに告げた。

表面上は平静を装っても、腹の底では激しい苛立ちを煮えたぎらせて。


この女鬼は分かっているのだ。

珠祭の現状も、九音の置かれた立場も。

彼女の望みも、全てを承知した上でとぼけているのだ。

全てを分かっていてなお、澪を狙うのだ。


故に、苛立ちが止まらない。

噛み締めた唇から、血が滴る。


集まった二十の中には、『彼女』がいる。

『彼女』は九音の全てを理解した上で、澪を狙う。

澪が九音にとって何であるかを分かっているのに、だ。

許せない。

許せないから殺してやりたくなる。


九音は怒りに震える喉を極力抑え、低い声を搾り出した。


「そこに、いるんでしょう……母様」