「…さんっ!!澪さん!!」
「わああああっ!?」
ふいに耳に届いた雛子の声に、澪ははっと目を見開いて大声を上げた。
真っ白な蛍光灯の光に一瞬目が眩む。
横から心配そうな雛子の顔が覗いた。
「…ぁ、はぁ…はぁ…ひ、雛ちゃん?」
「澪さん、大丈夫…??すごい汗だよ?」
雛子の言う通り、服は全身から吹き出した汗でぐっしょりと濡れていた。
まるで頭から水を被ったようだ。
肌に張り付いた布がかなり気色悪い。
「悪い夢…?」
澪のただならぬ様子に、雛子は眉を潜めた。
「夢?」
いいや、違う。
あれは夢などではなかった。
あの指の感触も冷たさも恐怖も、あの存在感も。
あれはリアルだった。
そう、間違い無くアレは…そこにいた。
悪夢などという生易しいものでは無かった。
「髪の長い女の人。雪みたいに色が白くて、とても冷たい…」
声を出すのが辛い。
喉が…、あの女の触れた部分がまだ冷たくて痛いのだ。
「ゆ、幽霊を見たっていうの…?」
「違う…。違うよ…雛ちゃん」
そう、違うのだ。
アレは幽霊なんて、生易しいものではない。
もっとずっと濃くて深い恨みを孕んだ…
「…鬼」


