呪イノ少女、鬼ノ少女

右に一歩体をずらす。

直後、隕石と化した鬼が爪を振り下ろして落下してきた。

地面が凹み、砂埃が舞い上がる。


「鈍い」


砂埃を破って、九音の手刀が突き出された。

狙いは、鬼の心の臓。

胸を貫き、引き摺り出して握り潰す。

幾ら鬼と言えど、脳と心臓だけは破壊されてしまえば、ただでは済まない。

しかし、


「鈍いのは、そなただ」

「っ!?」


手刀が空を突き抜けた。

其処に鬼の姿は既に無く、響く声は背後から。

九音は反射的に体を回転させ、裏拳を振り抜く。


「ぐっ……!」


鬼が振るった爪と激突し、腕の皮膚が弾け、鮮血が舞った。

が、構わず背後に大きく飛んで距離を取る。


「『視え』なかったか?」


鬼はニタリと牙を覗かせ、獰猛に哂った。

九音はボタボタと血が滴り落ちる腕を抑え、顔を歪めた。

黒く蠢く右目で鬼を睨み付ける。


「『視える』……のね」

「何も不思議はあるまい。『視え』て当然だ。同じ物を持っているのだからな」


黒曜石と黄金が交わる。

二つの異能の瞳。

一つは人に、もう一つは鬼に。

両者に、本来は『視える』はずのない物を『視せ』ていた。