呪イノ少女、鬼ノ少女

「屋敷に籠もって、澪の機嫌を取ってなさい」

「っ…」


頷く以外に返事は出来ない。

ここで無茶をしたところで、二人が危険になるだけだ。


「奥の間を使いなさい。あそこには、多少の陣を敷いてあるから」

「……分かりました」


雛子は唇を噛んで、部屋の中へ入った。


「澪さん、屋敷の奥へ」

「ん?何かあったの?」


屋敷の奥へと隠れた二人を見送り、九音は気配の方に向き直った。

やけに生温い風が、肌に纏わり付く。

気持ち悪い。

ドロリと粘り気のある血を、塗りたくられているみたい。

呼吸をすれば、肺の隅までこびり付く。


「……鬱陶しい」


吐き捨てる九音。

そして、その不快の大元が姿を現す。


「先の娘を貰い受けに来た」


屋敷をぐるりと囲む塀。

その甍の上に、女鬼が一匹立っていた。


「隠しても、無駄だぞ」


雪より純白の肌の上に、金色の瞳が揺らめいている。

見た目は儚げで風に吹かれて掻き消えそうなのに、彼女が発する存在の質に圧迫されて潰れそうになる。

伊達に、二十は入っていないと言う事か。


「渡してもらおうか、当主」

「寝言は墓の下だけにしておきなさい」


九音が動いた。


流水の所作で駆け出し、黒曜の右目を開く。

脳裏に、映像の断片。

五秒……いや、三秒後。

鬼が飛び上がり、頭上から落ちてくる。


瞬時に意識を現実に引き戻し、九音は動く。