呪イノ少女、鬼ノ少女

「澪、えっと、その…元気を出しなさい」


正午過ぎの、珠祭屋敷の一室。

九音は困り果てていた。

午前中、澪が雛子を伴ってやって来たまでは良かったのだが、どうにも浮かない顔で溜息ばかりを吐いているのだ。


「み、澪がそんな顔をしていては、え…っと、死にたくなるから」


九音にしてみれば、気が気でない。

可愛い澪は、ずっと笑っているべきなのだ。

出来れば耳が腐り落ちるまででも、悩みでも愚痴でも聞いてやりたい。


が、方法が分からなかった。

至極当然。

彼女はこれまでの経験で、他人の相談に乗ったことなど一度もないのだ。

家族も友人もいないのだから、無理な話である。


で、その経験不足が思い切り祟っていた。

今も九音が、茜の名を出して地雷を起爆させてしまった所だった。


「うぅ、本格的に茜さんを怒らせちゃったよぉ…」

「茜?アレが悪いの?」

「でも自業自得だし…うあーん!!」

「嗚呼!澪、泣かないで。お願いだから…ね?」


自己嫌悪モードに入った澪に、九音の言葉は届いていない。


頭を抱え、うーんうーんと唸る澪。

その後ろで、九音は必死に宥めようと頼りなさ気に腕を彷徨わせている。

これは、本気で困っているらしい。

明日は槍でも降るのだろうか。

と、庭先から見守っていた雛子は、カラっと晴れ渡った青空を見上げるのだった。