呪イノ少女、鬼ノ少女

「犯人は分かっているんすか?」

「あぁ。去り際に、わざわざ挨拶かましてくれたからな」


此花と違い、一貴は特段の感情は表さない。

むしろ世間話でもしているかのような、気軽な口調だ。


彼は、そういう人間だ。

常に、自身の調子を崩さない。

一見まともなようで、実際は常軌を逸した感性とマイペースでもって生きている。

もしくは、単純にネジが飛んでいると言うべきだろうか。


「名は、天草黒丞。んで、盗まれた太刀の銘は童子切・鬼打」

「天草に…童子切安綱の鬼打ですか」


両者とも、大和は知識としてだけだが知っている。


天草黒丞。

鬼祓随一の実力の持ち主であり、鬼に親しみ過ぎ、近付き過ぎた者。

千を越える鬼を葬り、その果てに裏返ってしまった、哀れな隻眼の鬼祓。

十年前に何処へとなく姿を眩ませ、死んだと噂されていたが、どうやら生きていたらしい。


そして童子切の鬼打。

鬼打とは、真作を越えんと打たれ、結果本物を凌駕するに至った贋作の事を言う。

ただの贋作ではない。

鬼打は全て等しく、本物を凌駕せんとの思いが強すぎたが故に歪んでいるのである。