所変わって、京都某所。
紅葉の気配を少しずつ覗かせ始めた小高い山の中腹に、珠祭の館を遥かに凌ぐ巨大な屋敷ある。
その中の、畳が敷き詰められただけのだだっ広い一室に、大和はいた。
一段高くなった『主』が座する場、そこに向かって静かに平服している。
と、そこへ奥の間から従者を一人連れた背の高い男が入ってきた。
年の頃は三十前後。
だがその髪は老人の如き白髪であり、肌も色素というものを忘れてしまったかのように病的に白い。
就寝用の着物に浅葱の羽織を纏い、どうにも眠たげに真紅の瞳をだらしなく蕩けさせている。
「仕事で寝んのが、どうにも遅くなりがちでな。待たせて悪かった」
欠伸混じりに言って、男は座にどっかりと胡坐を掻いた。
従者の女が、神経質そうに咳払いをするが、男は意にも介さない。
「全然待ってないっすよ。こっちこそ御就寝を妨げてしまったようで、申し訳ないっす」
見るからに己より身分が高いであろう男に、大和は普段の口調を崩さない。
彼が、そのような事を気にしないと知っているのである。
が、
「鬼切、口の聞き方には気を付けろ。この方は、五千の退魔師の長、天奉院一貴様であらせられるぞ」
女、黒菱此花は許さない。
厳しい口調で、大和を叱責する。
紅葉の気配を少しずつ覗かせ始めた小高い山の中腹に、珠祭の館を遥かに凌ぐ巨大な屋敷ある。
その中の、畳が敷き詰められただけのだだっ広い一室に、大和はいた。
一段高くなった『主』が座する場、そこに向かって静かに平服している。
と、そこへ奥の間から従者を一人連れた背の高い男が入ってきた。
年の頃は三十前後。
だがその髪は老人の如き白髪であり、肌も色素というものを忘れてしまったかのように病的に白い。
就寝用の着物に浅葱の羽織を纏い、どうにも眠たげに真紅の瞳をだらしなく蕩けさせている。
「仕事で寝んのが、どうにも遅くなりがちでな。待たせて悪かった」
欠伸混じりに言って、男は座にどっかりと胡坐を掻いた。
従者の女が、神経質そうに咳払いをするが、男は意にも介さない。
「全然待ってないっすよ。こっちこそ御就寝を妨げてしまったようで、申し訳ないっす」
見るからに己より身分が高いであろう男に、大和は普段の口調を崩さない。
彼が、そのような事を気にしないと知っているのである。
が、
「鬼切、口の聞き方には気を付けろ。この方は、五千の退魔師の長、天奉院一貴様であらせられるぞ」
女、黒菱此花は許さない。
厳しい口調で、大和を叱責する。


