千歌夏様‥あなたにだけです。〜専属執事のタロくん〜

「…お嬢様…千歌夏お嬢様…私の大切な…人…」

え…………?
タロくんが私の耳元で話しかける。

「…タロくん?」

「お嬢様…申し訳ございません…どうかもう少しこのまま…私の話を聞いて下さいませんか?」

「…ええ」

「私は…昔も今もこれからも、ずっとお嬢様の味方です。けして、一人にしません。お嬢様は、私の生きる意味なんです…ですから、私があなたを置いて何処かに行くなどと、ありえませんので、安心なさってください。」

「…でも…私の事避けてたじゃない…」

最近のタロくんの様子は明らかにいつもと違っていたわ…

「………………それは…」

タロくんが言葉を詰まらせる。
バッッ…
私は…タロくんから勢いよく離れ、彼の瞳をジッと覗き込んだ。

「…千歌夏お嬢様…」

タロくんが応える様に私の目を見つめてくる。
その表情からは、何を言いたいのか探る事ができなかった。

「…タロくん…?」

「いいえ…何でもありませんよ。大丈夫です。私は、いつまでもお嬢様と一緒です。」

そう言って、タロくんが優しく微笑んだ。

「…タロくんがそう言うなら、信じるわ。」

そう言って私も笑う。
だけど…
だけどね、タロくん…
私ね、知ってるのよ…あなたが何かを言いたいのに、それを飲み込んでいるを…
私のために、何かを我慢しているのを…
だって…私はずっと…言いたい事を我慢している人生だったから…