「…お嬢様?」

「…どうしてなの?」

どうして…私を避けるの?それなのに…こんな風に…するのよ。

「私…タロくんがわからない…」

「…えっ…」

思わずタロくんに詰め寄る。
…もう、こんな気持ち…耐えられない…だって…私…一人になりたくない…

「タロくん…私の事…どう思ってるの…」

どうしようもないくらいに涙がとめどなく溢れてくる…

「う…ヒック…ヒック…」

タロくんの腕を掴む…
硬くて…たくましい男の人の腕…
見上げると、黒くてサラサラな前髪がタロくんの目にかかっている。執事の時は後ろにまとめて流しているから、変な感じ…。タロくん…
前髪の下には意志の強い綺麗な瞳が見えた。それは、いつも見慣れた執事のタロくんの瞳と少し違う…。
タロくんと私の視線がぶつかる。
その瞬間…とても悲しい表情になる。
その顔を見て私は堪らず懇願してしまう。

「…タロくん…私を一人にしないで…どうしたら…好きになってくれるの?何でもするわ…だから…お願い…」

涙がまた溢れてくる。
その時…タロくんが私の腕をゆっくり引き寄せた。
ギュッッ…
タロ…くん?
ギュッッ…
私はタロくんの顔を見上げようとするがその腕の中にスッポリと収まってしまい、タロくんの胸に顔を埋めたままでいた。
トクントクントクントクントクン…
これは…胸の音?
私の?
違う…
タロくんのだわ。
タロくんの胸の音が聴こえてくる。