「あの…失礼ですが、お名前とお歳は…?」
夏美がおずおずと手を挙げた。
「多賀陸人。16」
同い年だ。
他校の人…だよね。学校ではモテるんだろうなぁ。
「ナンパなんて高校生でずいぶんと変態じみたことしてるのね」
み、美琴、言い方っ…。
もし不良とかだったらどうするの…!?この人、ちょっとチャラそうだし。
「そんなに見える?ひどいなぁ」
多賀くんは「へー」と美琴をジロジロと見た。
「君、強いなぁ。この子と付き合わせてくれないの?」
「そんなの許可するわけないでしょ。だいたいね、この子にはダンナさまがいるのよ」
だ、ダンナさまぁ? 誰、それ。
「付き合ってないんでしょ?
それにこの子、その人のこと好きじゃないじゃん。彼氏欲しいって言ってたし」
「これからの予定なのよ!」
だんだんとふたりの言い争いはヒートアップ。
どうしよう…!?
夏美は困りきってあわあわしてるし、私も話についていけないし。
うん。よし!
いちごミルクタピオカのカップを持って、美琴の腕をつかんだ。
「帰ろう…!」
「えっ、麻衣!? 待っ…」
夏美も連れて、3人で店を飛び出した。
定員さんと、テラス席の女子小学生がびっくりしてこっちを見ている。
「はぁ…はぁ…はぁ」
運動が苦手な私と夏美はすぐにギブアップ。
美琴はポカーンとしたあと、「あははっ」と笑いだした。
「ナイス、麻衣!」
えへへ。
今ごろ多賀くん、カフェで呆気にとられてるかな。