「じゃあ麻衣は彼氏とか欲しくないの?」
「欲しい…っていうか…。憧れはあるよ」
でも私は可愛くないし、彼氏とか夢のまた夢で…。
「彼氏がいたら、どんななんだろう…」
「……じゃあ俺と付き合ってみる?」
………へっ?
いきなり後ろから声がした。
振り返ると、真後ろにイケメンひとり。
え、誰?
「……麻衣、知り合い?」
にぎやかな店内に似合わない、敵意丸出しの低い声で美琴がイケメンをにらむ。
「いや……全然」
たぶん私たちと同じくらいの歳。エプロン付けてないからここの店員さん…ってことじゃなさそう。
知らない人に「付き合わない?」と言われたのって初めてだよ。
てかそんなこと言われたの自体はじめてだけど。
「彼氏、欲しいんでしょ?俺がなってあげようか」
「…え」
グイグイと顔を近づけられる。
近い…っていうか、なに!?
「…やめて」
美琴が私とイケメンの間に入る。
「だいたい何なの?いきなり見ず知らずの人に付き合おうだなんて。不審者?もしそうならもっぱら迷惑。さっさとどっか行って」
さ、さすが…。
美琴のあまりにもの迫力に、イケメンさんもタジタジ気味。
「付き合ってみたいなら付き合ってみればいいじゃん。君、タイプだし」
私の肩に手をのせてニコニコ。
い、いきなりそんなこと言われても…。
「け、結構です…」