「………奏太?着いたよ?」
はっ、と気づくと麻衣が不思議そうに見上げていた。
「……あ、ああ」
もう駅に着いていて、人並みを押しのけながらなんとか電車から出る。
「解放感〜〜!あつかったぁ」
んー!と麻衣が背伸びする。
俺はまだはやる心臓を抑えながら家路を急いだ。
晩ご飯のハンバーグにポテサラを食べると、ぐったりモードの俺たちはソファにもたれかかって映画鑑賞。
麻衣はくいつくように見ているけどそんな興味のない俺は退屈だ。
机の上に置いてあったくしを取って、麻衣の髪をすく。
ふわっと同じにおいのシャンプーが香った。
「……ねぇ、見ないの?」
「うん。見てる」
「うそだー」
麻衣の腕の髪ゴムを取り、前髪を結んでみた。
「……くくっ」
「ちょっとー、ちょんまげにしないでー」
テレビの中で男女が手をつないでる。
俺も麻衣と手をつないでみた。
男子が女子の肩に頭をのっける。
俺もコツン、と麻衣の肩に頭をあずける。
「えーなに、実体験?」
「……どんな気分?」
「今いいとこなの。しー」