キミだけのヒーロー

「あー……。オレって将来娘ができたら、嫁にやりたくないタイプかもしれん……」


「んあぁ?」


オレの間抜けな発言に目の前のサトシが顔を上げた。

片方の眉を吊り上げて、まるで珍しい生き物でも見るかのような表情でオレを見る。


「え? 今の声に出てた? ウソ! 心の中で思ってただけやのに!」


「普通に丸聞こえやったけど……? でもわけわからんから、あえて放置」


「なに? 追求せーよ! オレに興味持ってくれよー!」


「ありえへん」


そう言うとサトシはまた視線を手元に戻して、携帯をカチカチといじりだした。


今オレはサトシの家にいる。

テスト勉強に励むためだ。


なんで勉強しにわざわざここに来るかというと、それにはオレの家庭の事情があるのだ。


オレには8つ下、つまり只今小学3年生の妹がいる。

8歳も離れていると、さすがにケンカをすることもなく、オレは妹が赤ん坊の頃からめちゃくちゃ可愛がった。

そのせいか、妹もかなりオレになついてくれてる。

いや、むしろなつきすぎだ。


部活もなく早く家に帰ったりしたら、“かまってくれ”と目で訴え、オレにべったりとくっついて離れない。

とても勉強どころじゃないのだ。

そんなわけで避難すべく、サトシの家にいるってわけ。