震える手で玄関を指差した。

それが今できる唯一の行動だ。

それなのに

「おっと!!ゲームのイベント始まる時間じゃん!!」

そう言いながら、やっと家に帰ってくれたけど。

平然とされているのがなんか負けた感しかない。

このままじゃホストくんのペース。

どこかで逆転しないと。

なんて考えている余裕もなく。

就職活動も毎日、人の家に上り込んでいるホストくんのせいで進む気配もない。

今はホストくんよりも、生活の方が最優先。

それでも48社応募して、面接に進めたのは0社って。

現実って厳しすぎる。

だからって、離婚したことには後悔しない。

…あの生活するくらいなら。

もう振り返りたくもない。

そんな事を考えているから。

キンコーン

『凌駕(りょうが)
約束はできているだろうな?』

元旦那からLINEだ。

この人からLINEが来るたびに冷たい電流が体中に走って行く。

『大丈夫。香乃も元気だし。』

それだけ返信した。

離婚する時、香乃を育てる権利をくれたのは。

元旦那との約束があったから。

早く何とかしなきゃ。

焦る心と現実はリンクしない。

何とか1日を終えるのが精いっぱいだ。