彼が冷たかった理由。

「なんで逃げるの」


公園までそのまま引きづられ、まだ子供のいる公園のベンチに座らされる。

「僕が嫌い?だからあんなこと言ったの?」

襟元を掴んでぐいっと引き寄せられる。
あんなこと、とはなんだろうか。

私は気に障ることをされてきたのに、それでも怒らずにいたのに、彼にはなぜ責められなければならない。

「言っておくけど、僕はお前と別れるつもりないから」

そう鋭い目付きで言った。
なんと、彼はまだ付き合っている気でいたらしい。

「...そっちは散々女の子と帰ったりお昼食べたりして?
肝心の彼女にはなにもしないじゃない。
これだったら他人の方がマシ」

言いたいことを言う。
止めなければいけないとは思うものの、伝えるべきだとも思う。

「私は今まで交友関係に口出してこなかったのに、渉になんで言われなきゃいけなかったの?
この一週間話してないし顔すら見てなかったのになにが《別れるつもりない》?
いつまでも私が黙って従うと思わないで」

渉を押し退けて、再び帰路に着く。
待って、という声が聞こえるが待たない。

これじゃまた先週の繰り返し。
早く彼に別れを告げて、終わらせなければならない。


「待って、優愛」

今度は肩ではなく、腕を掴まれた。

「嫉妬したの、優愛が秋元のこと琉君って呼んだり、すっごい仲良いから」

「......」

「加賀屋って後輩もよく話してて、ずっと僕の優愛に話しかけんな、って思って...

優愛も嫉妬したら、俺の側に居てくれると思った」

腕を引かれ、渉の胸に顔が埋まる。

「でもいきなり席替えは隣じゃなくていいとか、自然消滅とか優愛が片思いしてるだけとか...
ごめん、今めっちゃ焦ってる」