「席につけ!これから始業式だ。
今学期も気を引き締めていけよ!」

HRが始まった。私が席につくと、

隣にはうつらうつらとしている蛍の姿。

私に気づくと小さく手を振ってくれた。

眠そうな目に甘えん坊の彼を思い出し、

微笑ましくなってそっと振り返した。

「おはよう、眠そうだねぇ~」

HRが終わり、廊下を歩いていると、

大きな欠伸をする蛍が視界に入った。

「ん、昨日も寝るの遅かったから。
台本読み込んでたんだ、文化祭の。」

…そうだ、蛍は文化祭だけじゃない。

やっぱり…忙しかったんだ。

我儘なんて言わなくて正解だったな。

「そっか…台詞合わせ楽しみだね!!
始業式終わったら二人でしようよ!」

「あぁ、お手並み拝見といこうか。」

眠そうだった視線がギラリと光った。

皆さん…彼は…夏夜蛍は本気です。

最高の劇が出来上がる予感です!!

「望むところですぞ!!」

あぁ、楽しい…蛍と時を過ごすのは、

こんなにも楽しい…幸せだ。

体育館の入り口に差し掛かった時、

男性とすれ違った…あ、香水。

彼からふわっと上品に香った。

記憶の中の香りが鮮明に蘇る…。