「あっ、りんご!」
私は思いつきをそのまま口にした。
「もうりんごは出たじゃないの」
「違う。調理実習だよ!」
「調理実習?」
「そう、隣のクラスの子が言ってた、りんごを使ったスイーツを作るって!」
「私たちが作ったりんご飴じゃなくて?」
「たぶん違うはず。行ってみよう!」
私たちは、誰もいない廊下を走って調理実習室に向かった。
戸を引く前から、シナモンの香りが漂ってくる。
「誰もいない、もう作った後とか?」
そう言って、圭子が冷蔵庫を開けた。
「あっ、あれは!?」
私は手を突っ込み、ラップがかけてあるお皿を取り出す。
これはどこからどう見ても──。
「りんごタルト!」と、私たちの声が重なる。
「やった!これであいつの攻撃も無効にできる!」
「でも圭子、私は信じてみたい」
「えっ?」
「愛海のこと。ちょっと変わってるしワガママだし、なに考えてるか分からないところあるけど、それでもやっぱり私の友達なんだ。だから──」
「それは祐美の勝手にしなよ。でも私は信じない」
圭子が言い切った。
「でも…」と言いかけた時、あの感触がやってくる。
死りとりゲームの始まりだ。