ならば『直接描いてもらったらいかがですか?』と和葵が提案し、今回の契約に結び付いたのである。

「今回、光によって色が変わる顔料を使うらしい」

「ほぉ。それは楽しみですね」

「ああ、いい店になるだろうね。ただ、器は考え直さないといけないな。開店祝いのほうは君に頼むね」
「はい」

「あとこれ、僕はいけないって断っておいたけど、誰か行かせて」
彼が差し出したのは別のお得意さま主催のホームパーティ。

「お嬢さまの二十歳の誕生会ですか。わかりました。サトシを行かせましょう」
サトシは物腰の柔らかさとアイドル並のビジュアルから女性客に人気だ。
和葵の代役としては役不足でも、とりあえずお嬢さまは納得してくださるだろう。

冬木和葵は、行く先々でこんなふうに誘われてくる。

金も権力も頭脳も、おまけにビジュアルまでもとオールマイティなのだから、女性に人気があって当然だろう。