麗しの彼は、妻に恋をする

「それで、その週刊誌の記事っていうのはジルが持って行っちゃったの?」

「はい。受け取ろうとしたらスッとバッグに隠されてしまいました。夏目さんに言われていた通り、一応会話は全部録音しておいたんですけどね」

以前夏目から、なにか怪しいと思った時は必ず録音するようにと言われていたのだ。
冬木の名前に、吸い寄せられる悪人を見分けるためですよと。

「よしよし、えらいぞ柚希。よくやった」

ポンポンと頭をなでられたが、柚希は反省しきりだった。
自分がしっかりと陶苑のことを勉強していれば、彼女のウソには引っかからなかったのだから。

――ずっと彼の妻でいるために、これから本気でがんばろう。

もっともっと、陶苑のことも和葵のことも知りたい。

「そういえば、和葵さんの趣味ってなんですか?」

「え? 僕の趣味?」

「聞いたことがなかったから」

「それはね。妻を溺愛すること」

和葵はそう言ってにんまりと笑うと、柚希の右手を握った。


「あ、雪だ」

フロントガラスに、小さな結晶がつく。

「ほんとだ、初雪」


陶芸は当分お休みだ。
麗しの彼と柚希の、温かい冬が来る。






おしまい☆