「では、改めて。初めまして。一ノ宮雅貴と申します。浩太郎とは小学校から高校までは一緒だったんだ。 仕事は、エアースカイの専務取締役になります」

 エアースカイ、その航空会社は……。

 「茉奈花さんのご両親には、大変残念なことになり、深くお詫びいたします。雅貴は、茉奈花さんのご両親と最後に約束をしたそうなのです。どうか、聞いてやってくれませんか?」


 そう、エアースカイは私の両親が乗っていた飛行機の航空会社。
 そして、その墜落事故で両親は亡くなった。
 飛行機でアメリカの学会発表から帰国するところだった。
 その飛行機には雅貴さんも乗っていて、両親の近くの席だったのだという。
 その時、墜落するまで私の両親と話していたんだという。
 その内容が、二人の娘である私のことだった。
 
 その後、数少ない生き残りとして注目を浴びてしまった雅貴さんは、その陰で私のことを探していたという。
 そんな話を浩太郎兄さんにしたところ、兄さんはその夫婦が私の親であると気づき、時々私のことを話していたのだという。

 混乱と緊迫した空気の中で、優しく話をして一緒に居てくれた私の両親に、彼は深く感謝しているのだと。
 そして、落ちてすぐの時。
 父は即死だったが、庇われていた母は息があったのだという。
 墜落先が山の中であったことで救助が遅れ、助からなかったが。
 そんな母が、彼に言ったのだという。

 「もう、会うことも、成長を見ることも叶わないから。君が元気になったら、私たちの娘に会いに行ってね。元気に、好きなことをして生きなさいと伝えてほしい」