そして臨月に入ってすぐ、雅貴さんは急遽アメリカへの出張が入り4日ほど留守にすることになった。

「なんで、こんな大切な時期に僕は出張に行かなきゃいけないんだ!!」

雅貴さん、急遽の出張に身重の妻を置いていくという事にかなりご乱心の様子。

「大丈夫よ、すぐ下の階には伯父さんも浩太朗兄さんも希代美さんもいるのよ?病院だってすぐ隣なのに、なにを心配しているの?」

思わず苦笑気味に雅貴さんに聞けば、雅貴さんはキッパリと言い切る。

「僕が戻るまでに産まれちゃうかもしれないじゃないか!僕は、絶対この子の生まれる瞬間に立ち会いたいんだ」

うん、立ち会い希望で病院のパパ教室にもしっかり忙しい中通ってたもんね。

妊婦体験もして、こんなに重いの?って驚いてその後は箸より重いもの持たせようとしなかったしなぁ、と私は遠い目をしてしまう。

そんなパパの悲痛な声を聞いたからか、お腹の中でぐにーっと動く我が子。

「ほら、パパのことちゃーんと待ってるって」

私の言葉にお腹の動きを見て雅貴さんはサッとお腹に手を当てて言う。

「いいかい、あと五日はお腹の中で待っててくれよ。全力で仕事片付けて帰ってくるからね」

もう臨月で三十七週の正産期に入り、先日希代美さんからはもう中の子のタイミング次第ね。
いつ産まれても大丈夫とのお墨付きは出ている。

「しょうがないから、パパが戻るまで待っててあげてね?」

お腹からは元気なパンチでお返事を貰い、私は雅貴さんを送り出したのだった。