でも、覚えがないんだよなと首をひねっていると、彼は苦笑しつつ言った。

 
 「あの頃は、君の両親が亡くなっているのに、前に出て話をすることをためらっていたから。陰からちらほら、覗いていたんだよね。浩太郎には怪しいから、やめろってよく止められてたな」
 
 うん、正直その場面想像したら、ヤバい高校生のお兄さんにしかならなかった。
 だって、私そのころランドセルの小学生だったはずだし……。
 さわやかに話しているけど、会話内容もその行動もヤバいです……。

 その話を聞いて、両家の両親もやや顔が引きつりつつも、どうやら彼には引く気がないらしい。

 「だから、まずは婚約者ってことで。お付き合いから初めて、結婚しましょう!」

 うん……。
 どこにだからが掛かっているのか分からないから、ご遠慮申し上げたい!!

 でも、なんか向こうのご両親が必死の形相なんですけど!
 なんか、うちの伯父夫妻も、これはどうしましょうか? 的になってるけど、雰囲気は前向き加減で、ちょっと、おかしいよね!?

 「茉奈花ちゃん、ダメかな?」

 キラキラ眩しいイケメンに、押し切られるように、ご遠慮申し上げたい気持ちとは裏腹に、その場の雰囲気から気弱な私には、とりあえず頷くしか道が残されていなかったのだった。

 かくして、初めてのお見合いは実の両親が引き寄せたらしい縁により、結婚を前提にお付き合いという形になったのでした……。

 美形が過ぎるイケメンの笑顔は凶器なのだと、恋愛偏差値底辺の私は身をもって思い知ったのでした……。