防音室の広々としたレッスンルームにいるのは、あたしと歌の先生。

そして、ピアノを弾く衛斗だけだ。


衛斗のことは嫌い。

だけど、歌に集中できたら、自然と衛斗も空気のように見えなくなる。


とは言っても、あたしの課題曲を奏でるのは衛斗の伴奏。

もちろん、歌の先生だってピアノくらい弾けるけれど、それをなぜ衛斗が弾いているのかというと……。


その理由は、ムーサ声楽コンクールでは、ピアノ伴奏者とペアで出場するのが条件だからだ。