フリースのネックウォーマーを鼻の下まで引き上げた。

霧のせいで寒さが倍増だ。

足元の山道がぎりぎり目に見えるレベルまで

状況が悪化した。

「もうなんでよ。」

と文句を言いつつ

リュックからヘッドランプを取り出して

帽子の上にベルトを巻き付けた。

明るい霧の中を

さらにこうこうとライトの光を照らして

ずんずんと歩いた。

下からずっとたどって来た山道だ。

分かれ道はなかったはず。

霧とはいえまだ昼前で明るいのが唯一の救いだ。

3時間歩いても頂上に着かないのは

道を間違えたからだ。

ようやく自分の失敗を実感した。

「もう最悪。」

登山にはいつも事前に印刷した地図を必ず持参した。

携帯電話がつながりにくいからだ。

紙面を確認した。

「あーなんだ。こっちに来ちゃったのね。」

最初の計画では

頂上に一度登ってから

少し戻りつつ湖に立ち寄る予定であった。

それが先に湖へ直行する道へ来てしまっていた。

「入山口を間違えたのか。まっいいけどね。」

気を取り直して歩を進めた。