どんな湖か見てみたい思いと

その先にある秘湯を楽しみたいという気持ちでいた。

霧の中を薄っすらとわかる山道を歩いた。

と微かな声を耳にした。

聞こえた方へ目を向けて足を止めた。

他のハイカーだろうか。

誰かいると思い胸に安堵を覚えた。

霧が深くなり少々心細かったからだ。

まだ登り始めて2時間も経っていない。

声の主が誰かはわからなくても

姿が見えるはずだ。

しばらくその場で立ったまま

もう一度耳をすましたが

思い切って声をかけてみた。

「あの、すみません。誰かいますか?」

少し大きめの声で聞いた。

返事がなかったので再度声を張り上げた。

「すみません。誰かいませんか?」

自分の声が周りに響いて

なにやらきまり悪い感じがしないでもない。

「んもう、何とか言ってくれてもいいじゃない。」

一人ぶつぶつとこぼして再び歩き出した。

向こうも単独なら条件は同じだ。

とにかくこの山道をどんどん登るしかない。

もう少し山頂近くになれば

霧が晴れているかもしれない。

山のふもとはなかなか霧が動かないものだ。