ハッと目を覚ました。

久実はうっかり眠ってしまったことに愕然とした。

「先輩?」

吐く息が真っ白だ。

ヘッドライトの光で

目を閉じている翔平を見た。

「先輩?起きて。」

声をかけても目を開けないことに

久実はパニックになりそうだった。

「翔平!ねえ起きて!」

数ミリのすき間もない窮屈なシュラフの中で力の限り揺さぶった。

「お願い、起きて!」

どうにかして腕をシュラフの外に出しファスナーを開いて

ひじで上半身を支えた。

翔平の頬を片手で触った。

「ひっ!」

あまりの冷たさに恐怖を感じた。

まさか死んでる?

「翔平!翔平!お願い、起きて!」

涙が出てきた。

どうしよう。

どうしたらいいの。

頬に流れた涙が冷気で凍りつきパリパリと痛い。

両手で翔平の顔をおおった。

胸に抱き寄せて温めた。

ちょっと待って、息してる?

こわごわと顔を寄せて

鼻先に自分の鼻を近づけた。

かすかに鼻息がわかる。

良かった、生きてる。

でも反応がない。

自分の心臓がドクドクしてめまいがきそうだ。

どうにかして温めないとダメだ。

久実はこの冷凍庫状態の中で考えた。

外に出るしかない。

テントの中も外もたいして変わらない温度なはず。

身体を動かして体温を上げるんだ。

そう考えた。