その頃

ふもとの入山口では山間部の管理部門の数名と

定例会に出席するために下山していた山岳警備隊の森下敬吾が

地元の消防本部と連絡し合っていた。

「常連の高木くんの他に、立花という女性がまだ降りて来ません。」

「ガスで足止め喰らってるか、凍ってるかだ。」

「縁起でもないこと言わないでくださいよ。」

「5年前と同じだ。」

「5年前?」

「行方不明の男女がいただろ?」

「あの時の男の方は確か高木という名だった。」

「森下さん、それはどういうことです?」

「偶然だろう。夜明けまで待つしかない。」

その言葉に誰もがうなずくしかなかった。