相変わらずシュラフの中でも手足は冷え切っていたが

二人とも笑い合うことで気持ちが温まった。

「確かに、美人に言い寄られたことは何度かあった。」

「でしょ。」

「俺はいつでも言い合えて、自分をさらけ出してでもぶつかり合える相手がいい。」

「ふ~ん。」

「俺の腕の中でもがいて、しかも減らず口の、誰かさんだ。」

「私?」

「俺と付き合ってみないか?今から翔平でいいよ。久実。」

「うそ、ホントに私でいいの?」

「何度も言わせるなって。」

翔平は久実の額にちゅっとキスをした。

「この体勢だと、これが限度だ。」

「許します。」

「こいつ。」

お互いあらためてしっかりと抱き合った。

「この世で最高に冷え込んだハグだな。」

「クスクス。愛が足りないのかな?」

「言ったな。」

「先輩を呼び捨てするなんて、勇気いるかも。」

「すぐに慣れさせてみせる。」

「頼もし~い。」

再び二人の笑い声がテント内に広がった。