◇◇◇

先輩。眠れない。


天井からごろんと横に体を向けると、君と目が合う。


先輩は眠らないの?


君は眠ったかと思ったら、だいたい長い瞬きだったりする。



外はまた激しい雨の音がしている。


先輩、私ね、雨の日は眠れないの。


君の首筋に指先を当てて、触れる面が大きくなるように首の後ろまで手のひらを這わせる。



どうしてあの日、あんな雨のひどい日に、自転車で帰ろうとしたの?


君の唇に親指を優しく押し当てる。口づけみたいに。