その眼光の鋭さに息をのむ。古竜の眼力は、半端ではない――!
 ところがだ、次の瞬間お爺ちゃんドラコンは、気迫に押されて慄く私に向かい、目を糸のように細くしてニカリと笑ってみせた。
 え!? そうかと思えば、ドラゴン全てに共通する、背中のおもちゃみたいな羽をピコピコとはためかせ、二階の子供部屋目掛けて飛んでくるではないか……!
 ――ぽふんっ。
 可愛らしい着地音と共に、お爺ちゃんドラゴンは窓から室内に降り立った。
《これはこれは、はじめましてお嬢さん。うちのはねっかえりのおひいさまが、突然押しかけて、お世話をかけてすみませんでしたな》
 そうしてお爺ちゃんドラゴンは、先ほどの剣呑とも思える目つきが嘘のように、柔和に話し掛けてきた。
「い、いえ! むしろ、無理を言って引き止めたのは私の方なので! あ、私はフローラと言います。よろしくお願いします」
 お爺ちゃんドラゴンの毛は、白が多く混じるグレーだ。目の上のマロ眉っぽい白い毛だけ、他の部位よりもちょろりと長く、それがまたいかにもお爺ちゃん風だった。