激おこ転生幼女のモフモフ無双!

 移民者である王妃様だが、実はいまも出身国の名を明かしていなかった。しかし、ユーンデル王国に移る前の暮らしがどんなに苦しいものであったのかは、想像に難くない。
「僕の女王。あなたの仰せのままに」
 陛下は大仰な仕草で王妃様の手を取ると、その指先に口付ける。王妃様は艶然と微笑んで、陛下の頬をサラリと撫でた。
 ……なんとも、似合いの夫婦だ。俺は身震いするような、薄ら寒さを覚えながら国王夫妻を見つめていた。
 同時に、思いを新たにしていた。燃え立つような正義漢ではない。しかし陛下こそ、真に賢王と呼ばれるに相応しい君主なのだと。そうして王妃様もまた、陛下の隣に立つに相応しい女傑だと――。
「そうそう」
 王妃様は思い出したように呟くと、陛下の頬からスルリと手を引いて、俺に目線を向けた。
「ときにフレデリック、あなたが赴任するモーリダ領というのは面白いわね」
 王妃様の言葉は、肝心の「なにが」の部分が抜けている。
「面白い、と申しますと?」
「まぁ、ほほっ!」