激おこ転生幼女のモフモフ無双!

 俺に向かって語り掛けてはいるが、陛下は俺からの答えを求めていない。
 陛下はただ、愚痴をこぼしたいだけなのだ。幼少のみぎりから、多くの時間を共にしてきたからこそ、十二分に心得ていた。俺は静かに聞き役に徹することにした。
「まったく僕を見習って欲しいものだ。賢王などと持ち上げられてはいるが、その実体は国民のためにあくせく働く働きアリだ」
 陛下は政務机を立つと、王都を一望できる長窓へと移動した。俺は静かに陛下の後に続く。
 ――キィイイイ。
 途中で背中から小さく扉の開閉音があがるのに気づいたが、陛下の耳には届かなかったようだ。
「しかし、アリというのは強いぞ。日の当たらぬ土中を地道に掘り進め、住処を広げる。どんな虫だろうが、うっかり落ちようものならアリの餌食だ。それらを栄養に、アリはまたコツコツと土を掘り、住処を拡張し続けるのさ」
 段々と近くなる衣擦れの音と気配にも、いまだ陛下は気づかないようだった。