最初に取り戻したのは、聴覚だった。そして次に、視覚。じんわりと目の前が明るくなって、視界がゆっくりと開かれていく――。
　……ぅおぉっ!?　バーコード頭にでっぱった腹をした、いかにも中間管理職ですっておっさんと、見るからに新人くさいヒョロリとした青年のコスプレ姿に、せっかく覚醒した意識が再び吹っ飛びそうになった。……このふたり、なんつー恰好してんのよ。
　あろうことか、ふたりは白い貫頭衣にショルダードレープ、編み上げの革サンダルという、ギリシャ神話の世界をそのまま体現したかの様なコスプレをしていたのだ。
　だけど、残念ながら純正日本人にその恰好はいただけない……。
「お前のミスだ、当然だろう。私は忙しいんだ、手間を掛けさせるんじゃないぞ？　いいな、お前の裁量で納得させるんだ。くれぐれも、私の手を煩わせるな！」
　……ひどい上司だな。率直に、そう思った。
「か、課長～」