「フローラに、不測の事態が発生した! 状況は不明だが、突然の悲鳴の後、彼女から一切の返答が途絶えた!」
 岩の間から顔を引くと、まずは後ろで恐々と見守る騎士らと情報を共有する。同時に、ぐるりと視線を巡らせて、俺たちをここへ案内した男らの姿を探す。
「万が一危険生物と遭遇した場合は、怪我や毒被害の可能性もある! 火薬と石割道具を併い、岩穴を拡張しながらフローラの救出を目指す! ……それから、先ほどの男らはどこだ!? 呼んでくれ!」
 男らからここの岩山の形状や周辺の地形を聞けば、あるいはフローラが進んだ隙間に繋がる裂け目などが見つかるかもしれん。その場合は、岩山の外から破壊して救出する手段もあり得る!
「騎士団長! 男らの姿が見当たりません!」
「なんだと!?」
 頭の奥で、キーンと不快な警告音が反響していた。
 押し寄せて来る怒りや焦りといった悪感情に思考が焼かれそうになるのを、グッと拳を握り締めて堪え、なんとか平静な思考を保った。拳の中で爪が手のひらに食い込み、噛みしめた奥歯はギリギリと軋んだ。