もどかしい思いで、薬草を取りに行くフローラを見送った。無性に胸騒ぎがして、岩に張り付くようにしてフローラの動向を注視した。
 しかし岩と岩の隙間は狭い上に暗い。彼女が奥に進むにつれて、その姿を確認することは難しくなり、やがて、ぼんやりとしたランプの灯りすら見えなくなった。
 ならばと頻回に声を掛ける俺に、彼女は苦笑交じりに答えた。
「……あ!」
 もう何度目か分からない問答の後、突然、フローラが声をあげた。
「どうした!? なにがあった!?」
「岩の隙間が広くなってきているの! ”幻の薬草”が、そろそろ生えているかもしれないわ!」
 よもや緊急事態かと緊張が走ったが、返ってきたのは嬉々とした声だった。
「薬草もいいが、暗がりの中なんだ! 足を滑らせたり、どこかにぶつけたりしないように、くれぐれも慎重に!」
「わかってるよー!」
 俺が続けた注意喚起に、彼女は元気な返事を寄越す。狭さや暗がりを物ともしない彼女の様子に、苦笑が浮かんだ。