「へぇー! たしかに、清涼感のあるいい匂いだ。これで爺さんの痒みもいくらか楽になるね、ありがとうねフローラちゃん」
 お婆さんはクッキリと皺の刻まれた顔に、笑みを浮かべた。
「どういたしまして」
 香草はいくらだってあるけれど、可愛らしいレースの巾着が気に入っていた。しかしお婆さんの笑顔を見るに、大事なそれを手放すことに、後悔はなかった。なにより、痒みに苦しむお爺さんがこれで少しでも楽になるのなら、喜んで差し出したいというのが本音だった。
「お待たせしました!」
 そうこうしているうちに、ママが軟膏の瓶が入っているだけにしては大きな袋を手に、戻って来た。
「こちらが新しいお薬です。それから、これはほんの気持ちです。よかったら、お持ちになってください。本当に申し訳ありませんでした」
 袋の中を覗いたお婆さんは、嬉しそうに目を細くした。