「今は観光シーズンに重なる時期だ。部屋数の不足はあらかじめ予想出来ていた。だからご両親には、状況によっては一人部屋が宛がえず、相部屋となってしまう可能性を伝えていた。母君から、その場合はぜひとも俺が同室にと言われている」
 な、なっ、なんという周到さだ!
「そういうことだから、ここで押し問答を繰り返していても相部屋の事実は動かん。客室に行き、さっさと晩飯にするぞ」
 ここで私は、ふいにお迎えに来てくれたフレディが「全員が、昼飯返上で君の捜索にあたっている」と言っていたのを思い出した。
 あ、だとすると……。
 私は、おばあさんの家でお昼ごはんをご馳走になっているが、私の捜索からそのままドリアナ帝国まで追ってきてくれたフレディはお昼を食べていないはずだ。
 ユルグさんがくれたランチボックスが「たっぷり二人前」の理由にも、合点がいく。潤沢な量は、私たちふたり分の昼食兼夕食を想定したユルグさんの配慮なのだ。
「うん」
 思い至った私は、これ以上の反論をのみこんだ。