頬に心地よく風を受け、モーリダ領に向けて晴天の空を飛びながら、私は重たい瞼をこすっていた。
 ……うぅ、眠い。
 昨日のドリアナ城からの帰路、スカーレットの背上ではあんなに心地よく居眠りをこいていた私だが、いざ宿のベッドに入ればほとんど一睡もできぬまま朝を迎えていた。
 だけど、それもそのはず。まさか宿では、フレディと同室にされてしまったのだから――。

◇◇◇

 昨夜、宿に帰り着いた私は、真っ先にロビーで帰りを待ってくれていた飛竜騎士の皆さんに謝って回った。
「なに、フローラちゃんが無事に帰って来たんならそれでいいさ」
「マックスさん……」
 平謝りする私に、騎士のみんなは優しい言葉を掛けてくれた。
「違ぇねえな。だが、あんまり心配をかけさせないでくれよな。心配し過ぎて若禿にでもなっちまったら、女にモテなくなっちまうからな」
「……ユルグさん、ありがとう。だけど、それはいらない心配よ。ユルグさんは頭髪なんてなくたってイケメンぶりに翳りなしだもの」